Yoriito / ヨリイト

設計監修・コミュニティ醸成・運営アドバイス・ロゴデザイン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

 

アパレル修整会社が「私設公民館」を持つ

 
新潟県長岡市、JR長岡駅から徒歩10分ほどの歓楽街に建つ築約50年の3階建てビルのリノベーション。元はクライアントの親族が暮らした住戸だった。クライアントはアパレルの修整会社で、新規事業として1階にランドリーカフェを持つ私設公民館のような場所が計画された。修整会社のある長岡で地元の人々が寄り合える場所を設け、リアルなコミュニケーションを誘発する目的から「Yoriito」と名付けられた。
 
修整会社には多くの社員が在籍するが、工場での作業が中心でなかなかエンドユーザーとふれあう機会がないため、「Yoriito」を運営することで、会社の社風や居心地、愛着、よりいきいきと働けるモチベーションを醸成したいという意図もあった。経営者ご家族みんなで本計画を話し合い、みんなでそれぞれの意見を話し、担える役割を全うした。ネーミングもご家族からのもので、人々やさまざまな出来事の交差、積層を、衣料品修整のように糸を紡ぐ感覚になぞらえた。弊社がそのイメージからタイポグラフィーを制作、可変性のあるロゴとした。
 
周辺のロケーションは昼間は静かながら、集合住宅や喫茶店などの飲食店も見られ、市役所など公共的な施設からも近い。夜になると飲み歩く人々が行き交う歓楽街の一角でもある。特にメインターゲットを定めず、どのような属性の方も気軽に立ち寄り、声を掛け合える状況を作り出すため、狭い間口の1階に視認性や気軽さ、まちの風景として好ましいかたちを模索した。
 
駐車場とリビング、キッチンがあった1階は、奥行き1メートルほど土間の役割を持たせた軒先空間をとりながら、そこから先を室内化。カフェスペースを進み、突き当たりで30センチほど上がった奥が、洗濯機や小上がりのあるランドリースペース(まちの家事室)となる。通りからも店舗奥のランドリースペースが視認できること、キッチン内と軒先、店舗客席といった機能の違う場所それぞれから、互いの気配を感じられ、自然なコミュニケーションが発生することなどを配慮した。
 
現場はクライアントの社長のご子息夫婦を中心に運営されている。上階はカフェ客室としているが、将来的には社員やご家族、それぞれの想いやアイデアを実現していくものと想定し、1階より上の2階〜屋上は竣工時、ごく部分的に手が加えられた。2階家具はフレキシブルに空間を使いこなせるよう、地元工務店と共にオリジナルをデザイン。テーブルは古材を使った味わいを持ちながらもキャスターで可動し、大テーブルからお一人様用まで、自由に組み合わせられる。最上階は倉庫だった部分から屋上が広がり、オープニングの日にはここで地元長岡のシンガーデュオ「ひなた」のライブが行われ、まちの皆さんが集まるお祝いムード、大盛況の幕開けだった。
 
安心感とクリエイティビティが共存する場所。経営陣やスタッフの方々、地域の人々にとって、寄り道のような遊び場のような、居場所のような、ちいさなビジネスの場でもあるような、他にない豊かな場所。雪深い長岡において、属人性によるあたたかでゆるやかな空気感がもたらされるよう、今日もすくすくと時が紡がれていく。
 
ホームページ:Yoriito / ヨリイト
Instagram:Yoriito / ヨリイト
日刊新潟
 

プロジェクト名:Yoriito / ヨリイト
クライアント・事業者:山田修整有限会社
設計監修:株式会社グランドレベル
設計:石井大吾デザイン室一級建築士事務所
構造設計:加藤構造計画事務所
協力:大関美奈子
施工:株式会社池田組、大森木工株式会社
ロゴデザイン:株式会社グランドレベル
写真:中村絵
 
サイト:新潟県長岡市東坂之上町1-7

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