地域とつながりを持つフィットネスジムの1階

喫茶ランドリー宮崎台

 
キーワード:地域コミュニティ、住宅地


 

“本当の健康”を提供するフィットネスクラブに

 
 フィットネスクラブ業界は、これまで「運動」を主体としたサービスを会員に提供するという形で運営されてきました。さらに近年は、人口減少や少子高齢化などを背景に、新規会員獲得のため、各社はさまざまな新しいサービスを生み出し、しのぎを削り合っている状況が続いています。
 フィットネスクラブは「健康」をうたいながら、「運動」の促進を目的として事業を展開してきましたが、近年のさまざまな研究により、「運動」だけでは、もはや「健康」にはなれないことが実証されつつあります。そこで「運動」よりも、より重要なものとして導きだされたものが「人とのつながり(社会的福祉の状態)」でした。つまり、日常的に他者とのコミュニケーションの量がどれだけあるかが、その人にとっての“本当の健康”を左右するのです。
 欧米ではコミュニティを支える都市の整備に多くの予算が投じられてるのは、市民の「健康」と「医療費削減」という目的があってのことなのです。
 

 

ジムの1階に、市民が気軽に お茶と会話ができる場所を

 
 本事業は、ティップネス宮崎台店の1階ロビーに会員だけではなく、地域にひらかれた、ランドリー付き喫茶店をつくるというものです。1階のスペースは、街を行き交う人々が、最も目にする場所です。新しい1階は、ティップネスの新しい顔としても機能します。
 ここでは、会員ではない市民も、お茶や軽食を気軽に楽しむことができます。もちろん、会員の方が入出時に利用することも可能です。最大の目的は、ティップネスの1階に日常的な「人のつながり」の光景を生みだし続けることです。そのことが、地域社会全体の「健康」に寄与するということを、ティップネスの新しい企業メッセージとして、世界へ発信していきます。また、今回の事業は、そのプロトタイプとしての実験でもあります。
 
 

 
 外から見ると、1階に新しいお店ができたように見えます。今回の1階づくりは、お店そのものが、クッションとなり、新規顧客をやわらかくつなげます。運動好きな方だけではなく、あまねく市民が運動に親しむ新しいきっかけを与えるプロジェクトでもあります。
 

 

まちの人々が集うと どんな光景が広がるのか?

 
 ティップネス宮崎台店の1階ロビーに新たにつくるスペースは、弊社が自社で企画し、2018年1月から東京都墨田区の住宅街の中に運営している「喫茶ランドリー」を参考とします。ここでは、街に暮らす“あまねく人々”にひらいたお店づくりを行っています。
 「喫茶ランドリー」は、洗濯機・乾燥機、ミシンやアイロンを持つ“まちの家事室”付きの喫茶店です。ターゲットを限定せず、”あまねく人々”に使われるよう、空間とコミュニケーションをデザインすることで、結果、決して良いとは言えない立地条件にも関わらず、日々、0歳の赤ちゃんから高齢の方々まで、サラリーマンから地元の方々まで、さまざまな人に使われています。また、席単位、スペース単位のレンタルも行い、市民の自由な想いに応える形で、多彩な使われ方が日々起こっています。
 「喫茶ランドリー」は、オープン以来、100以上のメディアに取り上げられ、また国内外から1000人以上の方々が視察に訪れ続けています。行政機関や市区町村の方々、地域の開発や地域コミュニティ、医療・福祉に関わる方々、お寺や飲食店を経営されている方々など、その職種・分野は実に多彩です。これは、「喫茶ランドリー」のような施設がまちにできることが、下のようなあまたの社会問題の解決を根底で支えることへの理解が、少しずつ広がってきていることを示しています。
 ティップネスの1階につくられるスペースも、また同じ理念でクオリティの高いレベルで「まちにひらく」ことを実践していくことを提案します。
 

 

ティップネスの自社運営 グランドレベルのサポート

 
 「喫茶ランドリー宮崎台」の事業スキームは、下図のようになります。新たな店舗はの事業主体は、株式会社ティップネスです。弊社は、店舗の企画・運営から空間デザインをコンサルティングし、また、立ち上げ後のサービスやメニュー、コミュケーション(接客)方法に至るまで詳細にデザイン等のサポートも行います。
 店舗におけるすべてのことは、店員とお客様のコミュニケーションを誘発させることを最優先に考えていきます。この点が、このプロジェクトの大きなポイントになります。基本は個人や家族、友達同士を受け入れる場所となりますが、時として、店頭に立つスタッフが媒介となり、人がつながっていく状況を生み出していくことも求められます。
 店頭に立つスタッフには、3つのタイプが想定されます。ひとつは、ティップネスに関わりを持たない、地域住民によるアルバイト、もうひとつは既存会員の方のなかで、週に数時間働いてみたい方をスタッフに加えられればと考えています。最後に、普段ティップネスでインストラクター等として働く方々にも、お店に立っていただければと思います。
 

 
 すべては、ティップネスというスポーツジムが、ゆるやかに周辺のまちと新しい関係性を築いていくためのものです。宮崎台をひとつの足がかりとして、他の店舗にも、同様の機能を持たせ、企業の社会的価値が高まっていくことが、私たちの最大の望みです。

 
日々の様子は、instagramをご覧ください
https://www.instagram.com/kissalaundry_miyazakidai/
 

コンサルティング:株式会社グランドレベル
事業主体:株式会社ティップネス
設計・監理:石井大吾デザイン室一級建築士事務所
施工: 株式会社アペックエンジニアリング

 

 

 

 

 

 

 

Ground Level × Acttiveness